ハート島熱風食堂
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STORY 02 島の子

STORY
01.春の嵐
02.島の子
03.あたらしい夏
04.黒潮の便り
05.明日定食
06.おじいの海
07.元気そば
08.満天の星
09.天使の休日
10.待っている人
11.涙の浜辺
12.本日営業日和
13.いのちのうた
14.店主の器
15.名もなき花で
16.笑顔農園
17.夢の一滴
18.見えない力
19.夏はお熱く
20.恋する珊瑚礁
21.島の魔法
22.ウミガメ物語
23.五風十雨
24.心の花
終 章
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ハート島熱風食堂


第2話 島の子

晴れた昼さがり、静まり返った海。 オッチャンと髭面の海きりんが、いつもの席でぼんやり海を眺めている。
嵐で粉々になった熱風食堂は立派に再建されたが、なんだか明かりが消えたよう。
「今頃どうしてるかね?」
「まあ、あれは島の子だからね・・・」
「ああ、人間なんてやっかいなもんだな」
食堂の看板娘は、もう島にはいない。

その頃、たくさんの人と車が行き交う都会の交差点、 耳を押さえるように歩く少女の姿。マリーであった。
あの嵐の後、結局、おじいは帰ってこなかった。 遺体こそあがらなかったが、誰もがことの次第を悟っていた。 毎日浜に出て待っていたマリーも、やがて現実を受け止めた。 「おじいが死んだらよ、骨のはんぶんは海にまいて欲しいさ」 その言葉どおり、おじいは海になったのだ。

それからマリーは遠い親戚にひきとられ、この都会で中学生になっていた。 初めて会う親戚夫婦は優しかったが、マリーは日に日に元気をなくしていった。
そこはテレビで見るような都会で、望むものは何でも手が届きそうだけれど、 海も風も感じることはできない。急ぎ足の人々は、声もかけずに行き過ぎる。 四角い建物にかこまれ、マリーはいつもひとりぼっち。 心配したおばさんはマリーを病院に連れて行き、 その度にひどく悲しげな目をするのだった。
そんなマリーをなんとか元気づけようと、親戚の息子で大学生のクンちゃんは、 子供の頃に一度だけ行ったハート島の思い出を話してくれたが、 それもかえってマリーを切なくさせた。
ずっとマリーを支えてきたクイヌパナの力も消えてしまった。 島にいた頃の太陽のようなマリーは、もはやどこにもいない。

そんな折、マリーを訪ねて島からオッチャンがやってきた。 トレードマークの手ぬぐい豆絞りを頭に巻いて、 汗をかきかき話す姿に、マリーは泣きそうになる。
その夜、親戚夫婦の家に招かれたオッチャンは、 相変わらず下手なダジャレを連発しながら、 食堂建設当時のことをおもしろおかしくふりかえった。
オッチャンに心配をかけてはいけないと、夕食の席で精一杯元気にふるまうマリー。 親戚夫婦はマリーが明るくなったことに喜ぶが、 オッチャンはマリーの変化を見抜いていた。

翌朝、早起きしたマリーは、ひとりベランダに出て、島に思いをはせた。 四角い建物の上にあるこの空は、遠い海までつづいている。 ひかる風、吹き抜ける風、みんなの笑い声。 けれど、それらひとつひとつをうまく思い出すことすらできない。

その頃、島では、千年生きていると噂の古老トキおばぁが、 婦人会を動かして、新たな住人を迎える準備をすすめていた。 子供の頃から面倒をみてきたトキおばぁにとって、 オッチャンの考えることなど手に取るようにわかる。 みんなもそのことを察し、島はひさしぶりに活気づいていた。

最終日、マリーはオッチャンと遊園地に出かけ、楽しい休日を過ごす。 思えば、島に戻って浜にへんてこな食堂をつくったこの男に、 まだ見ぬ父親の姿を見ていたのかもしれない。 オッチャンの手はあたたかく、マリーはとうとう泣き出してしまう。
大方を予想していたオッチャンは、島に帰って来いと促す。
「人がいるべき場所は、待っている人がいる場所だと思うよ」
目の前に、懐かしい風景がひろがった。 それはぐんぐん勢いを増して、マリーの心を満たしていった。



豊かな明日を祈ったら
豊かな今日になりました
ハートのかたちだハート島
あなたとわたし一歩づつ





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