ハート島熱風食堂
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STORY 03 あたらしい夏

STORY
01.春の嵐
02.島の子
03.あたらしい夏
04.黒潮の便り
05.明日定食
06.おじいの海
07.元気そば
08.満天の星
09.天使の休日
10.待っている人
11.涙の浜辺
12.本日営業日和
13.いのちのうた
14.店主の器
15.名もなき花で
16.笑顔農園
17.夢の一滴
18.見えない力
19.夏はお熱く
20.恋する珊瑚礁
21.島の魔法
22.ウミガメ物語
23.五風十雨
24.心の花
終 章
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ハート島熱風食堂


第3話 あたらしい夏

戻ってきたマリーを、島はあたたかく迎えてくれた。
ひとまずマリーが寝泊りするのは、後見人であるオッチャンの家。 お隣に住む古老トキおばぁもあれこれ世話をやいてくれ、 新しい暮らしがはじまった。
マリーが育った家もそのままの状態で残っている。 島の人々は「風おじいは海になった」といいながらも、 ひょっこり帰ってきてほしいと願って家を守ってくれていた。
見慣れたはずの景色はどれも新鮮で、時間はあっというまに過ぎていった。 島の空気に抱かれ、次第にマリーは元気をとりもどしていった。
いつかの表彰状が貼られた食堂では、看板娘のカムバックを喜ぶ常連客らが、 おもしろがってマリーの名を呼ぶ。 そして、つがれた麦茶を一気に飲み干しては、また 「おーい、マリー」
「はーい、ただいま」
人がいるべき場所は、待っている人がいる場所だ。 マリーはこの食堂を世界でいちばんの場所にしようと決めた。

けれど、島にいくつかの変化があったのも事実だった。
熱風食堂は仲間の手で再建されていたが、真新しいテーブルに、 マリーはすこし違和感を感じている。 それに、おじいが命がけでたすけた海人見習いの義弘君が、 夢をあきらめて島を去っていたことも、マリーには残念だった。
もうひとつ変化がある。島に新しい住人がひとり。元気な東京娘・ハツミである。 マリーがいない間にやってきた彼女は、民宿のお手伝いとして島にいついた。 根っからの明るい性格で、すでに島の仲間にとけこんでいる。 マリーは島が自分の場所でなくなってしまったような疎外感をおぼえ、 何かにつけて声をかけてくるハツミをうまく受け入れることができない。
マリーの微妙な心境を察したオッチャンは、 食べればもりもり元気になる「元気そば」なる新料理を披露するが、 マリーの心をときほぐすことはできない。

午後、マリーが昔の桟橋で海を眺めていると、軽トラックに乗ったハツミが通りかかった。 民宿の客を港まで送った帰りだというが、わざわざマリーをさがしにきたようでもある。 ぜひ見せたいものがあるから乗れといわれるが、 マリーはハツミを無視して、なんとなく桟橋の先へすすんでいってしまう。
また、やってしまった・・・
マリーは桟橋の先端に座って「心の花」に思いをめぐらせる。
「心に花を持つ人になりたといつも思っているさ」
そんなおじいの言葉をもとに、マリーは心に花を思い浮かべ、不思議な力を持つようになった。 けれど、ククルヌパナがいったい何なのかは、マリー自身にもよくわかっていない。

そのとき、マリーの心に見たこともない白い花が咲いた。 次の瞬間、脳裏に強烈な映像がとびこんできた。 倒れているハツミの像だ。
ハツミの身に危険が迫っていることを察したマリーは、 島じゅうを走りまわって、土にひれふすハツミをさがしあて、 初めてことの次第をさとった。
そこは、風おじいの畑。主人がいなくなったにもかかわらず、作物は元気に育ちつつある。 畑を手入れしてきたのは、他でもないハツミだったのだ。
帽子もかぶらず炎天下で畑の世話をしたハツミは、軽い熱射病になったようだ。 「こんな調子じゃ島ではやっていけないさ」と言いながらも、 自分より大きなハツミを懸命にかついで帰るマリーであった。

あたらしい夏の予感。やがてこの島に、迷コンビが誕生する。



朝な夕なに海の風
かわす情けのあたたかく
ハートのかたちだハート島
流れてしかも変わらざる





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