ハート島熱風食堂
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STORY 08 満天の星

STORY
01.春の嵐
02.島の子
03.あたらしい夏
04.黒潮の便り
05.明日定食
06.おじいの海
07.元気そば
08.満天の星
09.天使の休日
10.待っている人
11.涙の浜辺
12.本日営業日和
13.いのちのうた
14.店主の器
15.名もなき花で
16.笑顔農園
17.夢の一滴
18.見えない力
19.夏はお熱く
20.恋する珊瑚礁
21.島の魔法
22.ウミガメ物語
23.五風十雨
24.心の花
終 章
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ハート島熱風食堂


第8話 満天の星

朝から浜は雨。食堂のわずかな軒下は、常連客で満員。気分は晴耕雨読。 島酒が入ったシゲさんは陽気に雨に唄う。 晴天つづきで疲れ気味だった島は、ほっと休息を得たようだ。
洗濯が大好きな物干し自慢のトキおばぁも上機嫌。 今でこそ隣り島から海底送管でふんだんな水がおくられてくるが、 かつて生活用水のほとんどを天水にたよっていたこの島では、 水を大切にし雨をよろこぶ心がいきている。

ところが、民宿ではハツミが頭をかかえていた。 今日泊まる親子連れの客は、予約のときから星を観るのを楽しみにしていた。 「夜は牛よりたくさんの星が出ます」と豪語したハツミだったが、 この天気では星など望めそうもない。
心配した保育所のヨッちゃんは、 島に伝わる昔話「アミヌカン(雨の神)」をもとにした絵本を持ってきて、 雨の大切さを教えてあげるのもこの島ならではだと提案するが、 ハツミはいまひとつ乗り気になれない。
そして、出迎えた港で、大きな望遠鏡を手にうなだれる少年の姿を見たとき、 ハツミの心配は決定的になった。

ハツミから相談を受けたマリーは、 こっそり浜に出てククルヌパナに雨がやむようお願いするが、 神様が決めた天気を変えることはできないと言われ、困り果ててしまう。 でも、きっとマリーにできることがあるはず。風はやさしくそうつけ加えた。

人のいいショウちゃんは海きりんと結託し、 せっかく太陽の島に来て雨にたたられた民宿の客をさそって、雨の海中散歩を決行。 やや濁ってはいるが驚くほど明るい水中に一同大満足するが、 もともと星がお目当ての少年だけは元気にならない。
その頃、マリーは家に戻って、大きな画用紙をひろげ、 いつも見ている夜空を思い浮かべながら星空の絵を描いていた。

その夜、雨の食堂に招待された親子連れは、 オッチャンの銀河イカ墨汁の歓待を受ける。 ひとさじすくうと底からミルクが浮き出てきて、ちいさな天の川があらわれた。
少年が初めて笑顔を見せたとき、 ヨッちゃんを乗せた軽トラ・ハツミ号が陽気な声とともに駆けこんでくる。 ヨッちゃんは島の夜空を描いた大きな画用紙をとりだすと、 雨の空を指さしながら本来島で観れる星をひとつひとつ解説しはじめた。
奇しくもマリーとまったく同じ考え。驚いオッチャンはマリーの顔を見るが、 マリーは用意していた自分の絵を後ろにかくして、一緒にヨッちゃんの星空講義に興じた。 涙ながらに手を握りしめるオッチャンに、マリーはウインクしてみせる。
星の見えない夜空に歓喜の声をあげる少年。そこにはたしかに満天の星があった。

翌朝、雨上がりの島に虹がでた。
オッチャンは「虹をかけるのは神様ではなく人だよ」と一世一代の名言をはき、 また島に来いと少年を送り出した。
ほっとしたハツミの隣りで大きく手をふるマリーは、 出番のなかった星空の絵も宝物になるかもしれないと思っていた。
今日も暑くなる。島にはやはり太陽が似合う。



月の夜なら保慶の浜
のぼる朝日は阿名泊
ハートのかたちだハート島
元気の素がまたひとつ





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