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STORY
01.春の嵐 02.島の子 03.あたらしい夏 04.黒潮の便り 05.明日定食 06.おじいの海 07.元気そば 08.満天の星 09.天使の休日 10.待っている人 11.涙の浜辺 12.本日営業日和 13.いのちのうた 14.店主の器 15.名もなき花で 16.笑顔農園 17.夢の一滴 18.見えない力 19.夏はお熱く 20.恋する珊瑚礁 21.島の魔法 22.ウミガメ物語 23.五風十雨 24.心の花 終 章 全話一括表示 |
![]() 第14話 店主の器
ある日、食堂にたいそうな桐の箱を抱えた上品なお客がやってくる。
着物姿の婦人は箱の中から取っ手のついた武骨な焼き物をとりだすと、
この皿に見合う料理を盛ってくれと注文した。さて、オッチャンは困ってしまった。 なにしろ熱風食堂は食材以外はすべて間に合わせで、お皿やコップもあるものを使っているだけ。 器へのこだわりなどまるでないのだ。 徳三おじいが有名どころの高価な焼き物だと言うので、 オッチャンはさらに弱るが、断りきれずに厨房に入る。 ところが、その皿を受け取った天使は、緊張のあまりお皿を洗い場に落っことしてしまう。 見事に砕け、とれてしまった取っ手。 婦人は気にしなくていいと笑ったが、天使は落ち込んだ。 ククルヌパナの力にどうすべきか問うたマリーは、 あの皿が大切な思い出の品だと知り、民宿をたずね婦人から話をきく。 お皿は亡くなった旦那さんが作ったものだった。 かつてオッチャンが勤めるレストランのお客だった夫は、 シェフの料理を盛ってもらうのをたのしみに陶芸をはじめ、この皿を残して世を去った。 一周忌を終えた婦人は、レストランの支配人からオッチャンの居場所をきいて、 はるばるこの島までやってきたという。 うれしくなったマリーは、婦人に頼み込んで割れた皿を再び受け取ると、 最高の料理を約束して、食堂へ走る。 その話をきいた天使は、ますます責任を感じて落ち込む。 何とかしなければならないとオッチャンは立ち上がるが、うまい料理が思いつかず苦悩する。 もともとお客さんの顔を見てつくるタイプの料理人。 当の本人が目の前にいなければ、なかなか力を発揮しにくいのだ。 一方、なんとか婦人を元気づけたいハツミは、愛車で島案内に出発する。 が、途中、ハツミ号のドアがとれてしまうというアクシデントに見舞われ、あえなく引き返す。 潮風にさらされ腐ったドアを直しながら、いつになく落ち込むハツミ。 隣りでは天使が深いため息。事態はいよいよまずい方向に向かいつつある。 夕暮れの海からやってきた海きりんは、 「やれやれ、人間なんてやっかいなもんだな」と笑って、 大きな貝殻の上にガーラという魚を置いてゆく。 それを見たオッチャンは目が覚めたように厨房に入り、ガーラをさばきはじめた。 あるものを使ってやってきた本質をありのまま見せるしかない。 開き直ったオッチャンの瞳に、ふたたび力がみなぎった。 その夜、食堂に招待された婦人は、素晴らしい光景に出会う。 昼間割れた夫の皿に、見事な活け作り。 脇を彩る青いパパイアと赤い海草には、島こしょうのソースが添えられた。 「あんたの皿は、皿としての機能を失っていないさ」 けれど、なにより驚いたのは、欠けた取っ手が風鈴として潮風に揺れていたことだ。 勇気を出して挑んだオッチャンの誠意は伝わった。 ここまで来てよかったという婦人に、風はやさしくこたえた。 翌日、熱風食堂の軒先に、風鈴がお目見えした。 婦人の意思で島に残った取っ手は、今日も島風を受け、涼しげな音を奏でる。 それは、マリーにとって最高の誇りである。 庭に花咲く人となれ 雨によろこぶ人となれ ハートのかたちだハート島 明日の風は明日吹く |
ハート島人物録
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