ハート島熱風食堂
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STORY 16 笑顔農園

STORY
01.春の嵐
02.島の子
03.あたらしい夏
04.黒潮の便り
05.明日定食
06.おじいの海
07.元気そば
08.満天の星
09.天使の休日
10.待っている人
11.涙の浜辺
12.本日営業日和
13.いのちのうた
14.店主の器
15.名もなき花で
16.笑顔農園
17.夢の一滴
18.見えない力
19.夏はお熱く
20.恋する珊瑚礁
21.島の魔法
22.ウミガメ物語
23.五風十雨
24.心の花
終 章
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ハート島熱風食堂


第16話 笑顔農園

民宿の庭先で気持ちよさそうに昼寝するハツミ。 繁忙期になってからというもの、午後の休憩時間はいつもこう。 日記をつけようとして、ついうとうと。 大きく笑って、どこでも眠る。だからハツミを見ていると、みんなが元気になる。

マリーがやってきてこっそり日記をのぞくと、 「マリーはにくらしい」とか「オッチャンはくさい」とか、 ハツミらしい簡潔な文章がならんでいる。 その中に「さびしい、さびしい」という文字。 よく見ると来週の日付だ。心配になったマリーは心に花を思い描くが、 ククルヌパナは優しい音楽を奏でるばかり。

そんな頃、東京からハツミのばあちゃんがやってきた。 案の定、ハツミをひとまわり大きくしたような元気おばあで、 来た早々に漬物をくばり歩いたかと思えば、洗濯自慢の古老トキおばぁと物干し一本勝負を演じ、 鮮烈な島デビューをかざる。
恥ずかしいと言いつつもハツミはまんざらでない様子。 ハツミは午後の昼寝も返上し、すっかり愛車となった軽トラ・ハツミ号であちこち連れてまわり、 ひさしぶりの孝行に精を出した。

ハツミと遊べなくてつまらないマリーは、ハツミ号の荷台にかくれて二人に同行。 走り出した荷台の上で「あはは、この私から逃げられると思うなよ」と立ち上がり、 ハツミ以上に無茶苦茶な娘だとばあちゃんにほめられ、複雑な気持ちになる。
むかしの桟橋に着いた三人は、船上で待っていたカワハギ艦長から、地引網の歓待を受ける。 ばあちゃんがその場で器用にとれた魚をさばき、桟橋の上で即席パーティー。 マリーは島の踊りを披露し、ばあちゃんにほめられ得意になる。

最後の夜、マリーらが主催した送別会に招かれたばあちゃんは、 主役のはずが熱風食堂の厨房を占拠。 ハツミをよろしくとばかりに、オッチャンのお株を奪う豪快な「元気鍋」をこしらえ、 にぎやかに宴を盛り上げた。
食堂の席で寝てしまったオッチャンは、翌朝、きれいにかたずけられた厨房に驚く。 その鍋の磨き方に本物を感じたオッチャンは、 ばあちゃんのパワーの源が元気ではなく真心にあったことを知り、 思いあらたに今日の仕度をはじめるのだった。

昼の船で帰るばあちゃんを見送ろうと民宿をたずねたマリーは、 ばあちゃんが急に朝の便で帰ってしまったことを知って落胆する。 ひとり見送ったハツミもけろりとして「ばあちゃん、また来るってさ」と笑う。 なんだか拍子抜けだ。

けれど、夕方、マリーは風おじいの畑でこっそり泣いているハツミを発見してしまう。 「さびしい、さびしい」日記にあらかじめ記されていたあの一行。 交通事故で早くに両親を亡くしたハツミにとって、 ばあちゃんは唯一の肉親だから、淋しくないわけがない。
ハツミはいつも笑っているけれど、泣きたくなるとここへきて、 誰にも内緒で泣いていたのかもしれない。
マリーは声をかけるのをやめ、しずかに泣き声をきいた。 風おじいの畑は良い人に受け継がれた。そのことがうれしい。

翌日、夜明けに畑に入ったマリーは、土に立て札を立てた。
「ハツミ農園」
この畑はハツミの笑顔を育む畑。だから、ハツミの名こそふさわしい。 これを見たハツミは、いったいどんな顔をするだろう?
もうすぐ畑の主が、朝一番の世話にやってくる。



豊かな明日を祈ったら
豊かな今日になりました
ハートのかたちだハート島
あなたとわたし一歩づつ





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