ハート島熱風食堂
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STORY 18 見えない力

STORY
01.春の嵐
02.島の子
03.あたらしい夏
04.黒潮の便り
05.明日定食
06.おじいの海
07.元気そば
08.満天の星
09.天使の休日
10.待っている人
11.涙の浜辺
12.本日営業日和
13.いのちのうた
14.店主の器
15.名もなき花で
16.笑顔農園
17.夢の一滴
18.見えない力
19.夏はお熱く
20.恋する珊瑚礁
21.島の魔法
22.ウミガメ物語
23.五風十雨
24.心の花
終 章
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ハート島熱風食堂


第18話 見えない力

ある日の保育所、キヌエねーねーが「この島はダメだ」と言い出し物議をかもしだす。 最近、ちかくの島が相次いでドラマの舞台となったし、 他の島には花のあるスターがいるのにここの唄者は青年団長シゲさんだけ。 依然としてなんにもない地味な島。 たしかに一理あるのだが、天使がいきなり「なんにもないことはない」と反論し、 冗談半分だった一同を驚かせる。
日々自己嫌悪とたたかう天使は、しばしば保育所のヨッちゃんをたずねるようになっていた。 彼女は島の母。彼女に話をきいてもらうだけで胸がすっとする。 そのたびにヨッちゃんはおだやかに言うのだ。
「あなたには、あなたしかない力があるはずですよ」

そんな折、食堂の再建で無理をしたマリーが熱を出してしまう。 トキおばぁから外出を禁じられたが、この繁忙期に寝ていなどいられない。 マリーはこっそり家を抜け出すが、 そうくると思って待ち構えていた天使にはばまれ、泣く泣く寝かされる。 同じく逃げ出したらつかまえようとしてたハツミは、地団駄を踏んでくやしがった。 当初ハツミが「天使」と呼ぶときはいくらか皮肉が含まれていたのだが、 それでも最近二人は似てきたようだ。

マリーに代わって食堂に出た天使。風鈴の音に責められながらも懸命に働く。 あいかわらずの人気者だが、 バナナジュースの量を均等にしようと二つのグラスと格闘し、 もたもたするなとオッチャンにしかられる。
「おーい、代役、早く麦茶麦茶」
「あ、はい、ちょっと待ってください」
シゲさんが持ち込んだ小型テレビから、「元アイドル・高山美樹、北海道で目撃」 なる衝撃的な誤報が流れているが、誰も気にとめない。 彼女は特別な存在ではなく、すでに島の一部になりつつある。

午後、しょんぼりして保育所をたずねる天使。 ヨッちゃんは近くの道端に咲いたパパイアの花を見せようと天使を連れ出すが、 ちょっと目をはなしたすきに、元気盛りの風太がいなくなってしまった。 保育所内をさがしてみたが、風太の姿はない。
責任を感じた天使は、あたりを走りまわって風太をさがすが、 あまりの日ざしに意識朦朧として道端に倒れてしまう。

その強烈な像は、家で寝ていたマリーのもとに届いた。 ハツミのときと同じように、ひとりでにククルヌパナが発動した。
マリーはあわてて起きだし、軽トラ・ハツミ号で出動。 首尾よく風太を保護し、不安の中で天使をさがすが、 倒れた天使をたすけのは意外にもキヌエねーねーだった。
「まったく、やっかいな女さ」
キヌエねーねーが笑うと、心配していたマリーもなんだか急におかしくなった。
マリーに不思議な力があると薄々感づいているハツミは、 「他人のことになると強い」と笑いながら、島にいる喜びを感じていた。

その夜、元気なった天使をたずねて、宿にたくさんの人がやってきた。 彼女は相変わらず苦笑いで、ひとりひとりに申し訳なさそうにお礼を言った。
なにもない島に、ちょっとやっかいな天使あり。 それをほこりに思っていないのは、おそらく当の本人だけであった。



波はくるくる彼方から
風が幸よぶこの島は
ハートのかたちだハート島
心の花を咲かせましょう





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