ハート島熱風食堂
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STORY 19 夏はお熱く

STORY
01.春の嵐
02.島の子
03.あたらしい夏
04.黒潮の便り
05.明日定食
06.おじいの海
07.元気そば
08.満天の星
09.天使の休日
10.待っている人
11.涙の浜辺
12.本日営業日和
13.いのちのうた
14.店主の器
15.名もなき花で
16.笑顔農園
17.夢の一滴
18.見えない力
19.夏はお熱く
20.恋する珊瑚礁
21.島の魔法
22.ウミガメ物語
23.五風十雨
24.心の花
終 章
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ハート島熱風食堂


第19話 夏はお熱く

太陽の季節、青い海を求めて多くの恋人たちが南の島を訪れる。 「なんにもない」この島に来てしまった二人にも、 美しい海はそれなりの思い出をくれる。 毎日港で出迎えるハツミは、ちょっと嫉妬しながらも、二人にとって良い夏になるよう祈る。
ところが、今日のカップルは何かおかしい。 学生らしいのだが、初々しいというか、まだ発展途上なのだ。 客のプライベートに触れない主義のはずがおせっかいと化したハツミは、 悪ノリしたマリーと天使をまきこんで、二人を距離を縮める作戦を練る。

そんな折、ノボルが東京から来た女子大生をゲット。翌日、海へ行く約束をとりつける。 女性客には必ず声をかけ島の狩人と称されるノボルだが、 これまでうまくいったためしはなかったので、一気に有頂天。仕事も手につかなくなる。 見かねたオッチャンは頭を冷やせとパパイヤ氷を差し出すが、いっこうに効き目なし。 純な恋心はやみくもに燃えあがるのだった。

一方、三人のキューピットは、「恋には障壁が必要」というキヌエねーねーの助言通り、 ことあるごとに二人の邪魔をはじめた。
「あはは、この私から逃げられると思うなよ」
どこまでも追ってくるハツミ号に最初は戸惑う二人だったが、よくわからぬまま応戦。 「なんて島なんだ」とぼやきつつも決死の逃避行を試み、 ハート島せましとドタバタの鬼ごっこを展開。 敵味方の間に奇妙な友情が芽生えてゆく。

ノボルの成功を知った島の男衆はうまくいくはずないと揶揄するが、 ショウちゃんだけはなぜか大感激。「せっかくだから、最高の海を見せてあげましょう」と、 カワハギ艦長に頼み込んで船を算段する。 準備は万端。百戦錬磨のノボルもなんだか緊張してくるのだった。

夕方、三人の愚考を知ったオッチャンは、 いいかげんにしろとたしなめるが、マリーは聴く耳を持たない。
天使はといえば、夜に宿を抜け出してロマンチックな月の浜へ出た二人をつかまえ、 食堂にひっぱりこんで強引に宴会をはじめる始末。 仕方なくオッチャンは恋がかなう特製カクテルをつくってあげるが、 それも争奪戦の末、ハツミに飲まれてしまう。
けれども、三人の真意を知った学生カップルは、妙な緊張もとれ、 すでに奇妙な歓待をたのしんでいた。
「ねえ、オッチャンは恋しなかったの?」
「したさ、その昔、とびきりでっかいのをな」
初恋の人と再びめぐりあう願掛けをしたオッチャンは、 その人にいつか最高のランチを食べさせようと必死で修行し一流シェフになった。 その半生はとてもドラマチックだ。
「恋したら、人もでっかくならないとな」
透明な月は、大騒ぎする食堂を、いつまでも照らしていた。

翌日、素晴らしい海日和になったものの、 狩人ノボルがデートを約束した相手は、朝一便で島を出てしまっていた。 愕然とするノボルを尻目に、港に男達の無常な笑い声が響く。 たいていの場合、現実なんてこんなものだろう。
最後まできちんと邪魔してやろうと学生カップルを見送りに行ったマリーは、 二人にせがまれて一緒に船に乗せられてしまう。見送るはずが送られるマリー。 見えなくなるまで港で手をふるハツミの姿に奇妙な感覚を抱きながらも、 この島の別れは最高だとあらためて知る。

空港の島の港で、一緒に記念のプリクラを撮って二人と別れた。 思い出の夏を越え、彼らはどうなってゆくのだろう。
にぎやかな港には、今日きたばかりの客が行きかう。 その様に目を細めながら、マリーは大好きな島へ戻る船を待った。



会うは別れの港から
ふたりあるいた東筋
ハートのかたちだハート島
手をふるきみを忘れまじ





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