ハート島熱風食堂
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STORY 23 五風十雨

STORY
01.春の嵐
02.島の子
03.あたらしい夏
04.黒潮の便り
05.明日定食
06.おじいの海
07.元気そば
08.満天の星
09.天使の休日
10.待っている人
11.涙の浜辺
12.本日営業日和
13.いのちのうた
14.店主の器
15.名もなき花で
16.笑顔農園
17.夢の一滴
18.見えない力
19.夏はお熱く
20.恋する珊瑚礁
21.島の魔法
22.ウミガメ物語
23.五風十雨
24.心の花
終 章
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ハート島熱風食堂


第23話 五風十雨

苦労も幸せも、海の向こうから風に乗ってやってくる。 それをあるがまま受けとめることが、島で生きるということさ。
食堂の席で、天使が徳三おじいの話をきいている。 おじいの昔話は長いことで有名なので、いま相手をするのは天使ぐらい。 みんなは祭りの準備で大忙しなのだ。

海神をまつる夏祭りは、戦後に公民館の音頭とりで復興した手作り行事。 まさに島じゅう総出。 子供のマリーも余所者のハツミも、重要な島の一員として、祭船づくりに夢中。 今年の目玉は、ヨッちゃんの発案で牛の顔を描いた大きな祭旗。 「五風十雨」と書かれた本来の旗も、青年団の手で一新された。
日一日と祭りが近づくにつれ、島外に出ていた者が続々と帰ってきて、島は活気づく。 迎える方もうれしい。ハツミは初めての祭りを精一杯たのしもうと、 元気に港と民宿とを往復した。

けれど、マリーにとって何よりうれしかったのは、 春の嵐の一件で島をはなれた義弘君が、 海人になる思いあらたに島に戻ってきてくれたことだった。 カワハギ艦長は涙ながらに家々をまわり、とれたての魚をくばり歩いた。 「またよろしくお願いします」真っ赤になって頭を下げる義弘君が、 とても晴れやかに見えた。

そんな折、祭りの成功を祈ってククルヌパナを発動させたマリーは、 なにかとんでもないことが起こることを予見してしまう。
しかし、周囲に注意を払っていたおかげで、 腹痛を訴えたキヌエねーねーの息子・海太が盲腸だと見抜くことができた。 首尾よく病院のある島に送りだし、ほっと胸をなでおろす。
感極まったハツミはマリーを抱きしめ、力まかせに喜びをわかち合う。
「あたしはずっと中途半端だったんだ、でももうやめた、 これからはいくところまでいってやるんだ」
驚くマリーにかまわず、ハツミはごうごう泣きながら「ありがとう」を連発。 「お祭りがんばろう」と繰り返した。
「あたしは、いくところまでいってやるんだ」
人前で泣くハツミを初めて見た。つまるところそれが、この島の夏なのかもしれない。

祭り前夜に催された余興の芸能大会で、 マリーとハツミはかつてのアイドル・高山美樹の曲に挑む。 洒落のつもりが、天使はいきなり舞台にあがってマイクをうばい、二人にウインクを送ってみせた。 島ではまるでいいところのなかった天使だが、プロの本領発揮。 自ら素性を明かした復活ライブは大盛況で、 彼女にとって忘れられないステージとなったに違いない。
トリをつとめたシゲさんの唄でみんなが踊ると、興奮は高まる。 オッチャンが一昼夜かけた「牛汁風モーレ鍋」も最高の出来。 祭り本番に向け、すべてが順調にすすんでいた。

そして迎えた当日。
トキおばぁが朝いちばんでくんできた海水を拝所にそなえると、 あとは男たちの出番。会場の浜は、祭船競争の始まりをいまかいまかと待っていた。
ハツミ号で島外からの見物客を迎えに行ったマリーは、港の空気がなんだかおかしいことに気づく。 元気にあらわれたマリーに、みんなが戸惑いの色をかくせない様子。
首をかしげながらも、いつものようにお客に駆け寄るマリー。 桟橋に立っていた婦人は、はっとするほど綺麗なひとだ。
「ようこそハート島へ」
荷物を受け取って、はじめて気づいた。それは、直感だった。

目の前の客は、消息を絶っていた母親に違いない。



波はくるくる彼方から
風が幸よぶこの島は
ハートのかたちだハート島
心の花を咲かせましょう





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