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STORY
01.春の嵐 02.島の子 03.あたらしい夏 04.黒潮の便り 05.明日定食 06.おじいの海 07.元気そば 08.満天の星 09.天使の休日 10.待っている人 11.涙の浜辺 12.本日営業日和 13.いのちのうた 14.店主の器 15.名もなき花で 16.笑顔農園 17.夢の一滴 18.見えない力 19.夏はお熱く 20.恋する珊瑚礁 21.島の魔法 22.ウミガメ物語 23.五風十雨 24.心の花 終 章 全話一括表示 |
![]() 終 章 熱風食堂
数日後、島はまた新たな客を迎えることだろう。いつものように港で出迎えたハツミは、「この島どうです?」ときかれ、 おそらくこうこたえる。 「いいとこですよ、なんにもなくて」 いかした軽トラックは、これでもかと照りつける日差しを受け、 牧場のまんなかの道をはしりだす。 青年団が立てた看板の文字は「牛さんは一歩一歩、僕たちはこつこつ」。 軽トラもまたしかり。もうすぐ煙草をくわえたキヌエねーねーの自転車とすれ違うはずだ。 牧場では、今日もショウちゃんが牛の世話に汗をかき、 牛舎のかげで青年団長シゲさんが三線をつまびいていたりする。 保育所では、双子の海太と風太が元気にはしりまわり、 婦人会長のヨッちゃんがまた新しい絵本を描く。 青い海にはカワハギ艦長の雄姿。 再び海人見習いとなった義弘君は、艦長のきびしい指導に立ち向かう。 縁あってトキおばぁに出会った人は意味ありげな予言に驚かされ、 運悪く徳三おじいにつかまった人は長い長い昔話をきかされることだろう。 ここはハート島。世界のどこにでもあるような、ちいさな島だ。 あいかわらずの面々と、ずっと変わらないゆったりとした時間。 特別なことなんて何ひとつ起こらない。 それでもここを訪れた人はみな、何かしら元気になって、 例えば、都会の雑踏で、子育ての戦場で、 再び飛び込んだ芸能界で、緊張して立つ新たな教壇で、 負けてたまるかと思いをあらたにしたりする。 次のお客は、もしかしたらあなたかもしれない。 島はずれにある古いお家。庭の花をのぞむ少女の部屋には、 海になったおじいの写真と一緒に、一通の手紙がおいてある。 初めて母からもらった手紙は、少女の宝物となった。 まずは文通からはじまる親子というのも、あながち悪くないと少女は思う。 すこしづつ、すこしづつ、育てていければそれでいい。 浜では、いつものように髭面の人間にばけた海の妖精が、 島酒を片手に「人間なんてやっかいなもんだな」などと、うそぶいていたりする。 そこは、世界のどこにでもあるような、ちいさな食堂。 ふりそそぐ太陽と、潮風だけが自慢の店だ。 厨房の奥では、いつものようにさえない男が、下手な冗談など言いながら汗だくで鍋をふる。 風鈴が揺れる客席では、いつものように少女が注文をとり、冷たい麦茶をついでまわる。 なにしろ暑い店だから、お客はこぞって彼女を呼ぶ。 「おーい、マリー」 「はーい、ただいま」 心の花を咲かせましょう。 ハート島熱風食堂 了
波はくるくる彼方から 風が幸よぶこの島は ハートのかたちだハート島 心の花を咲かせましょう |
ハート島人物録
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